朝から専務が私に電話をかけてきた。
「社長は辞めるな」と言った。
(実際は 辞めんでいいやろ だけど)
まだ頑張れる。
まだ踏ん張れる。
私「あれ‥‥?専務は?」
会社に着くと専務の姿はなかった。
「まだ来てないんだよ。
来ないつもりなんじゃないかな‥?」
事務所内は静かで、森野さん以外に私と目を合わせる人間はいなかった。
私「社長は!?」
「まだ来てないよ」
よし。好都合!!(๑•̀ㅂ•́)و✧
専務から電話があった。
社長が専務を止めたと聞いた。
専務は泣いた。
それも一度や二度じゃない。
こんな時に限って問題と言うのは重なるもので、インフルエンザで倒れる人がいたりクレームが出たり‥。
専務が安心して退職出来る環境ですら、そもそもない。
その度に専務は「何でこんな時に‥」と泣いた。
私は知ってる。
本当は専務は辞めたくないんだと。
私は知ってる。
辞めたところでどうせ気になって仕方がなくなるだけだって事を。
私は知ってる。
自分にまだ出来る事があると知りながら自分が投げた時、どれだけ後々悔やむのかを。
「あの時、あぁすれば良かったのかも」だの
「あの時、違う道を選んでいれば」だの
そんな たられば話 ではない。
出来るだけの力があったのに、見捨てた事
周りはそうは取らなくても、自分はそう捉えるもので
後の事は心配で泣く専務は絶対に自分を責める。
それでも専務が選んだ道であればその後悔も全て専務が受け止めるべきものだから私は何も言わないけれど‥
出来ればそんな後悔はして欲しくない。
それに例え専務が退職しても頑張って乗り切ったとて、結局専務にとっては
「私がいなくても何とかなるんだな‥」
そんな虚しさしか残らない。
会社が上手く行こうが傾こうが‥そこに専務がいなければ、専務の今までがどちらにせよ無駄になる。
いくら“守る”と言ったとて、手を離してしまえば専務自身は守れない。
専務が離れる事を本気で望むなら、後は専務次第と見限るけれど‥‥。
でも専務は私に電話をしてきた。
これが専務の最後のSOSだ。
私「全員手ぇ止めて集まって」
私は決めた。
覚悟も決めた。
したくもない、クソみたいな我慢をする覚悟じゃない。
専務が最後の日。
だけどその専務は出勤していない。
「華々しく送り出しましょうね!!(`・ω・´)」
その華々しく送る相手がいないwww
全員が手を止めて事務所に集まったけれど
こんなに静かに誰かの言葉を待っている全員の姿を私は見た事はなかった。
私は言う。
「専務、全力で引き留めるから」
と。