森野さんはしれっと言った。



森野さんの言葉だからなのか、それとも的を得ていたからなのか..



事務所内は一気に静まり返った。



そして私にも、その一言は重かった。



誰も何も言えなくなった。





私「..とにかく。

専務は引き止める。

でも私一人で何を言うたって無理やねん。

みんなで頑張ってくれないと..」



そうは言っても



「そんなん専務に任せるわ。

専務やねんから、どうするか位考えれば分かるやろ!?」



そう言って話は終わった。



まだ



これでもまだ、専務に全てを委ねるのか。



痩せ細っている専務を見ていても、誰一人「頑張る」とは言わないのか..。



私「森野さん、ありがとね!(๑•̀ㅂ•́)و✧」



「何が?」



私「何でもー!!(●`・3・)」



朝礼を終えて私は森野さんに声をかけた。



多分森野さんが言葉を発しなければ、きっと話は終わらなかった。





そして、私は諦めた。



専務を引き止める事。



今のままじゃ専務を引き止めたって、専務の負担になるだけだ。



….やっぱり私には何も出来ない。



専務がいようといなかろうと仕事はするしかないから



社内には変な空気が漂ったまま



今、専務がいない事。



今が当たり前にこれからはなって行くんだと。



多分誰もが覚悟を決めていた。



そしてパートの人達に至っては



「辞めます」



の一言を、ただ黙ってタイミングを見計らっているのであろう事も分かった。



私は何も守れない。



「優花さん、午前中に企業の人が来れますか?って..」



私「うん?大丈夫ッ!!

行くって言うててー♪」



かかって来い精神の私に、森野さんは小さく言った。



「優花さん、大丈夫なの?」



私「うん?行けるよ?」



「だよね♪」



私「うん(・ω・`)

???」



私には森野さんの言う意味が分からない。



だって私だもん。



行けない訳がないからwww

(๑•̀ㅂ•́)و✧




(*´・д・)(・д・`*)ネー



専務はまだ来ていなくて、社長の姿がそこにあった。



「本間に行けるんけ?

無理やったら俺が話通すぞ?

大丈夫け!?」



社長が言った。



社長がこんな言い方をするのは気を緩めている時か、余裕がない時だ。



普段の社長は基本的に語尾に「け」と言う言葉は付けない。



私も普段は言葉使いに気を付けている方だから

だからこそ分かる。



周りを見ていても、自分に余裕がない事が。



きっと社長も専務は当たり前に出勤していて、当たり前にそこに居ると思ってたんだろうな‥。



分かる事・言える事はただ一つ。



誰の言葉も誰にも届かない。



会社として、これはこの先やっていけるんだろうか‥。



誰も何も言わない。



言えば「でも」「けど」「だって」しかなくて



社長はこの先、まとめられるんだろうか。



私「行けるよ、大丈夫ッスw」



そう言って事務所を後にした。



私には今、目の前にある仕事をこなすしか出来ない。



私「私出るわ。

午前中に企業行かなあかんから」



そう言って荷物をまとめた。



メガネ君もAも専務がいなくなる事に落ち込んでいて



私「辛気臭いな。

凹む位やったら専務引き留めろや。

このクソ共が」



私は吐き捨てて会社を出た。



人の事は言えない。



私も、何も出来ない。



今の私に「みんなで頑張ろう!!」なんて言えない。



だけど、やるしかない。





私が会社を出てから数分後、一通のLINEが鳴った。



専務と話したよ



そのたった一言のlineの相手は誰でもなく、森野さんだった。